ハラスメント相談窓口を外部に委託するメリット

相談窓口の設置状況

上記のグラフは、平成28年度の調査です。
令和3年現在は相談窓口設置は義務となっているので、更に設置企業は増えていると考えられます。
注目頂きたいのは外部に相談窓口を設置している企業が、設置企業全体の1/3以上もあるということです。

なぜ、外部に委託する企業が多いのか。
その理由が下記です。

相談窓口の対応が不適切だと炎上する

外部相談窓口の多くは、産業医・公認心理師・臨床心理士・産業カウンセラーなどの専門職が対応してくれます。
社内にこのような専門職がいれば良いのですが、多くの場合、人事や総務の方が担当者になります。

・話を一方的に聞くだけ
・自分の価値観でアドバイスする
・説教する
・相談者に非がある前提で相談に臨む
・相談者の許可なく上司や同僚に事実確認をする
など、不適切な対応により炎上したり、二次被害を発生させる可能性があります

適切な相談窓口運用のために外部の力を借りる、ということです。

相談窓口の担当者に人事権があると相談しにくい

「何かあれば私に言いなさい」と、社長や人事部長が自ら相談窓口に立つことがあります。

さて、もし自分がハラスメントの被害にあった時、そのような「偉い人」に相談するでしょうか。
ハラスメントの加害者が社長と仲のいい役員であったらどうでしょうか。
営業部門でトップの成績を出し、いつも表彰されている課長だったらどうでしょうか。

「あの役員がそこまで言うのは、君自身にも良くないことがあったのではないか?
それはパワハラとまで言えないと思うぞ」

「君は営業成績が良くないな。営業成績トップの先輩の言うことをよく聞いて、精進しなさい」

のように、いつの間にか相談者が悪者になる可能性があります。
社内の偉い人・人事権のある人に「パワハラと騒ぐ奴」という印象を持たれると会社に居づらくなります
相談に来ずそのまま退職してしまう可能性があります。

このような事態にならないよう、個々の社員に先入観なしで対応できる外部相談窓口が求められています。

相談窓口担当者の精神的な負担が軽くなる

大きな会社であれば、毎日のように相談窓口に相談がくるでしょう。
相談窓口にはいろいろな人が来ます。

同じ方が「今日はこんなパワハラをされました」と毎日相談に来ることもあります。
それを「今日もか」と無視することはできません。

優しい方であれば、真摯に対応しすぎて、自分自身の心が疲れて壊れてしまうことがあります。
相談窓口を担当している社員のケアのためにも、外部相談窓口と役割分担するなどうまく活用して、負担を軽減することができます。

相談や関係部署への報告などにかかる時間が減る

相談窓口担当者の業務時間について考えてみましょう。

相談を受けるにあたり、60分話を聞くとします。
また、相談が長引いて、別日で再度相談日を設定することも考えられます。
(相談を効果的に行うため、一度に長い時間を取らない方が良いと言われています)

この時間にプラス、相談準備や報告などの業務が発生します。

仮に、毎月4人が相談にくるとします。

・対応時間:4名の相談×2回×60分(8時間)
・対応準備:適切な対応のシミュレーション・対応に関する専門知識の下調べ 4名×2回×60分(8時間)
・記録:4名×2回×60分(8時間)
→人件費換算4,000円×24時間96,000円/月

相談窓口担当は他の業務を兼務していることが多いです。
この例では、24時間が相談窓口に割かれることになります。

また先に述べたように、相談には精神的な負担がかかることがありますので、
このような対応を長期的に続けるのはデメリットも大きいでしょう。